SPAWN #120

In the beginning
初めて人の人生が失われた時、初めて人が死んだ時、彼の身体は冷たくなり、温かい草の上に横たわっていた。兄のCainは弟のAbelがふざけているのかと思った。だが、Abelが動きだすことはなかった。創造主が我々人間をいかに脆い存在へと創られたのか、知る由もない。
そして今、この場所は私を恐怖で満たしている。天地創造の中で誰とも共感しえない恐怖だった。何故ならこの世界の真実は私だけが知り得たから。罪と争いの煮え滾るような厳しい試練。誰も気にも止めない暴力に満ちた毒のある果物。カリオストロ卿は事態を見つめていた。闘いは自分のために起こった。自分は誓いを立てた。数世紀もの遅い進化の過程を数え上げる言葉が出来る以前から。自分が一日でもこの場所で仕えることのない創造主に対して自分が抱いた全ての憎悪を持って誓った。自分の言葉には真実があったのだから。

REDEEMERは思う。自分は天使であると。清純な光と美で形付けられた創造物。天界の炎が自分の崇高なフォームのなかを流れている。自分は子供。ニューヨークの病院で昏睡状態にある。銃弾はまだ脳のなかに残っている。この惨劇は真実なのだろうか。自分は魔界のために自分自身を再構築してきた。悲しむべき過ちを正すために。老いた者が騎士の使命ともいうべき探求のなかに自分を送り込んだ。全ての創造物の運命は自分の不確かな手のなかに委ねられた。自分は人生のなかで過ちを犯した。今、自分は過ちを犯すことはない。魔界は自身を粉々にしかねない戦禍の中にあった。 魔物どもは狂った絶望とともに戦いを続けた。勝利への微かな望みを信じて。またはスクラップをたらふく食い上げる目的のために。その真っ只中に魔界の誤った王が存在していた。このダークで恐ろしい神がかつては一人の男であったとは信じがたい。彼が未だに、この場に来た意味を思い起こせるような人間であることを望みたい。私には新しい誇大妄想をただ嫌うだけの存在に見える。私には赤に覆われた軍隊に見えた。それはより輝かしい闘いに挑むために永遠の時を刻む氷河から僅かに零れ落ちた水滴のようだった。また魔物たちの魂を怒りとともにかき混ぜているかのようだった。 それは壮大なドラマのようだった。しかし最終的にはそれはただのプロローグに過ぎなかった。単なる馬鹿げた寸劇に過ぎず、結末は明らかになる。遂に勝者が選ばれた。それは一マイルほど彼方に見つけることができた。古めかしい木箱を拾った者が蓋を開けていた。私の心の奥底に鳴り響く音叉のような直感。その男が何をしているのか、分からなかった。私(REDEEDER)は男に声をかけた。彼は開けられた木箱の中の光を見つめている。「これは見るには余りにも痛々しい。」男が呟く。

Al:Spawnが魔力を揮うと、暗き君主に相応しい宮殿が魔界の奥底に現れた。Al:Spawnは頭に王たる所以の冠を受け取った。そこにREDEEMERが古めかしい木箱を運んできた。宮殿にはヘルスポーンたちが集まっている。「俺に対峙する者どもよ。前を向き、俺の裁きを受けるのだ。」だが、そこでカリオストロ卿がAl:Spawnに声をかける。「SPAWN、聞くのじゃ。お主が行なうべきことを思い出せ。お主は世界をより良きものにすることを望んだはずじゃ。お主は正にその目の前におる。この機会を自分の指から滑り落としてはならぬ。」そう言うと、カリオストロ卿は古めかしい木箱をAl:Spawnの前に掲げた。「手にするのじゃ。お主の望みの全てがここにある。どうか、儂に情けをかけることを忘れないでくれ。」「なんだ、これは？」「楽園。エデンの園の欠片じゃ。好敵手である神によって永遠の時の全てが閉じ込められている。それは種だ。新しく、より良い園を育てるために使われる。」
Al:Spawnが木箱を開けると光が放たれ、周囲の景色は一変し、そこには楽園が現れた。「SPAWN！　お主は成し遂げた。儂はお主を誇らしく思う。見ろ、彼女はお主を待っていた。」そう言うカリオストロ卿が指差す先にはワンダがいた。正にAl:Spawnの望む世界。Al:Spawnにはもう寄生コスチュームなど必要なかった。寄生コスチュームとともに、頭に被っていた冠も脱ぎ捨てた。「ワンダ….」だが、冠を脱ぎ捨てると同時に、世界が変わり始めた。舞っていた蝶は燃え上り、草原は草木もない岩肌へと変化する。ワンダの姿も崩れていった。悪いジョークのようだった。Al:Spawnの身体に炎が燃え上り、その炎はやがて一人の男の元へと流れていく。そこにはAl:Spawnが脱ぎ捨てた冠を頭に被ったカリオストロ卿の姿があった。老いたる姿で、枯れ果てたような老人の心の奥には長い間、野望が潜んでいたのだ。「Le roi est mort vive le roi !」王が死んでも、新たな王が現れる。

ニューヨークの夜、雨の中、人間の姿に戻ったAl:Spawnが彷徨っていた。

And, after flattering dust with glimpses of Eden and immortality, resolves It back to dust again — for what? Lord Byron “Cain, A Mystery” 1821