SPAWN #119

魔界は幾つもの顔を持った獣だ。唾の塊が天界から降ってくる。カオスが唸り、狂ったような喚き声が聞こえる。馬鹿げた風のなかに慟哭が聞こえる。何百もの罪の味。耐えがたくもあり、なまめかしくもある。全てがバラバラになっていく。それはマレボルギア王がシモンズの影によって倒されてから始った。天界と地上と魔界の駆け引き。王の玉座は放棄されたまま。王から捨てられた孤児たちは無慈悲な父なる神に恋い焦がれていた。混沌のなか、魔物同志の闘いが繰り広げられた。海は赤く染まり、腐ったような風が空を流れる。フレビアック族をひどく嫌う者たちとその血族は軍隊を導いた。彼らは軍隊を掌握していたが維持できなかった。異議と混乱。軍隊はガン細胞が母体を食い尽くすかのように崩壊する。 魂の反乱、サンタ・モニカの子獣、狂えるマークが魔物たちの軍団を導く。殺人者たちの旅団は自由を求めて叫び、悪魔のような姿をしている王に対して罵った。年月が過ぎ、力は砂漠の砂のように流れていく。魔界の階層は音を立てている蛇のような回転盤の上で壊れ、国境を越えて広がっていく。魔界の奥底まで戦いが繰り広げられていた。

バイオレーターはカリオストロ卿を逆さ吊りにしていた。「同族殺し、殺し屋たちの始めたる者よ。俺は貴様のことを長い間、待ち続けていた。貴様がここに戻ってくる根性を持ち合わせているとは思わなかった。貴様が成し遂げたものを見ろ。そして絶望を。」するとそこにREDEEMERが現れる。「彼を離せ!」「でしゃばるんじゃない。これは大人のゲームだ。お前には見えないか。天界はお前を遣わしたが、見捨てていく。そこに座って、黙っていろ。」バイオレーターが振るった腕がREDEEMERに当たり、彼は地面へと墜落する。「さてと、何だ、これは。」バイオレーターの舌がカリオストロ卿の懐を弄り、古めかしい木箱を取り出した。バイオレーターは木箱を開けて、カリオストロ卿を罵る。「これがなんだというんだ。」「それは儂にとっては必要な…」次にバイオレーターの爪先がAl:Spawnに突き刺さる。「貴様はどうだ。俺の遊び道具と一緒にこっそりと逃げ去ろうとでもしていたか。はっきりさせよう。 俺は魔界の王位を欲していた。この時を長い間、待っていたんだ。俺は王位をなんとしてでも手に入れる。なにか言ってみろ、ヘルスポーン。王位は自分のものだと俺に言ってみろ。王位は貴様には無用なものだ。俺の前に転がり落ちてきて、それですべてが終わる。俺は誰であっても牙を剥く。魔王の寵愛を受けていた貴様であってもだ。SPAWN、貴様の弱点を知っているぞ。ワンダだ。完璧に理想化されたワンダだ。彼女は俺の手に中にある。俺たちは彼女のなかに俺たちの種を植え付けた。彼女の子宮に俺たちの名前を刻み込んだ。やがて彼女が俺たちの元に来る時、俺は彼女が魂を失ったかのように悲しむ姿を見ることになる。永遠に苦しみに悶える姿を。そして彼女は知る。全ての悲しい時間が、全てお前のせいであることを。」Al:Spawnはバイオレーターの顔を蹴り付けて奴の手の中から逃れた。「貴様がワンダのことを語るな。」だが、そこからバイオレーターの猛攻が始まった。闘いの叫び声が魔界全体に響き渡る。

その時、SPAWNの中の何かが動きだし、隠されていた目が目覚め、秘密の扉が開いた。彼は魔界の中にいる。彼の魔界のなかに。彼が自分の主を抹殺した時に受け継いだ魔界だ。彼は魔力を放ち、バイオレーターに打ち付ける。鎖はAl:Spawnをこの世界の中心へと固定する。そして鎖を伝わり、魔力がAl:Spawnへと集まり始めた。彼の声は炎で、彼の言葉は雷だった。「やれるならやってみろ。魔界でお前の側につくものを全て呼んでみろ。何も変えることはできん。この領域は俺のものだ。」

違う場所では古めかしい木箱を拾う者がいた。すると涙の谷から凄い音が聞こえてきた。谷にはさまざまなヘルスポーンが集結していた。彼らの王であり、兄弟である者とともに戦うために。Al:Spawnが叫ぶ。「反逆者や反乱者ども。魔物や魔界の亡者たちよ。自分がどちらに付くか、選ぶんだ。魔界の王は戻ってきたぞ！」